暮らしの舞台としての魅力は? 渋谷を語り尽くす「#シブラバ Vol.3」開催
2023.11.28
渋谷を愛する「渋谷LOVERS」が、渋谷の魅力をとことん語り合う「#シブラバ」。最終回となる3回目は、「SIW(ソーシャルイノベーションウイーク)2023」(2023年11月6日~12日)のプログラムの一つとして開催されました。今回は、とくに「暮らす」に重点を置いたクロストークを展開しました。
#シブラバ Vol.3 ~渋谷で働く・遊ぶ・暮らすキーパーソンが渋谷愛を語るミートアップ~
日時/11月9日(木)17:00~18:10
会場/渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホールB
料金/無料
主催/東急株式会社、東急不動産株式会社
企画・制作/Potage株式会社
進行
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Peatix 共同創業者/取締役CMO | Co-founder/CMO
藤田 祐司
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Potage代表取締役/コミュニティ・アクセラレーター
河原 あずさ
出演
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若佐慎一さん
1982年広島生まれ。広島市立大学大学院博士後期課程(日本画)満期退学。卒業後、月刊美術主催公募展「デビュー」にて準グランプリ受賞。 これまでの活動は国内外問わずその場を広げ、京都伝統工芸の「長艸繡巧房」に原画提供や、NYのファッションブランド「sawa takai 」、メディアアーティスト落合陽一、デザイナー串野真也と共にファッションブランド「凄い若い」を立ち上げるなど多岐にわたる活動を見せる。栃木県立美術館、広島市立大学、円覚寺塔頭龍院庵、作品所蔵。
事前インタビュー -
坂木茜音さん
京都美術工芸大学工芸デザインコース卒業。19ヶ国の海外渡航や寺田倉庫運営アシスタントなどを経て、個人事業主に。現在は、スマホをかざすだけのデジタル名刺「プレーリーカード」を展開する株式会社スタジオプレーリー共同代表。起業家の傍ら、アーティスト、シェアハウスの管理人という肩書きも持つ。伝統工芸・アート・建築がバックグラウンド。余白をつくりたい。
事前インタビュー -
横石崇さん
多摩美術大学卒。2016年に&Co.を設立。ブランド開発や組織開発、社会変革を手がけるプロジェクトプロデューサー。アジア最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」では3万人の動員に成功。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」や渋谷区発の起業家育成機関「渋谷スタートアップ大学(SSU)」、シェア型書店「渋谷◯◯書店」などをプロデュース。法政大学兼任講師。著書に『これからの僕らの働き方』(早川書房)、『自己紹介2.0』(KADOKAWA)がある。
事前インタビュー -
笹川ねこさん
編集者。岐阜生まれ。Webメディア「DIG THE TEA」ディレクター。元ハフポスト日本版副編集長。出版社を経て、海外ニュースメディアにて国内外のニュースや働きかた、ジェンダー、LGBTQ、家族などの特集や記事を手がける。2019年、フリーランスとして独立。メディア運営のほか「Yahoo!ニュース特集」「好書好日」「GQ」「広告」などで取材・執筆。2022年、Akatsuki Inc.設立。渋谷papamamaマルシェ元実行委員、拡張家族Ciftメンバー、(社)spods理事。1歳と6歳の男の子を子育て中。
事前インタビュー
「#シブラバ」の開催について
東急および東急不動産は、2021年に「Greater SHIBUYA 2.0」という事業戦略を策定し、渋谷でしか体験できない形で「働く・遊ぶ・暮らす」の3つを実現するという渋谷型都市ライフを提案しました。「働く」「遊ぶ」に比べて、「渋谷で暮らす」はイメージを持ちづらいワードかもしれません。そこで、実際に渋谷で「働く・遊ぶ・暮らす」を実践する渋谷LOVERSの皆さんをお呼びして、お話を聞く機会を設けたいと考え、「#シブラバ」の開催に至りました。
Googleマップの「ピン」の多さが街の魅力を物語っている
河原いよいよ#シブラバも3回シリーズのラストステージ。今回は、少しハードルの高さを感じる人の多い「暮らす」に重点を置いて語り合いましょう。最初に自己紹介をかねて、「私のシブヤ愛」を一言で語っていただきます。
横石独身時代は富ヶ谷に住んでいましたが、家族ができて用賀へ。その意味では、「渋谷を捨てた男」といわれても仕方がありませんが(笑)、日常的に渋谷をベースに活動しています。渋谷のイメージを一言で表すと、「お好み焼き」。すでにでき上っているものではなく、素材を渡されて自分でトッピングするなどプロセスを楽しめる街という感覚を持っているので。
河原さすが大阪人(笑)。お次は坂木さん。
坂木今年2月に立ち上げたスタートアップの共同代表を務めており、今は渋谷と恵比寿の2拠点を行き来して働いています。上京したのは2020年なので、この中では新参者かも(笑)。かつての渋谷には詳しくありませんが、Googleマップを開くと、どの街よりも「ピンの数が多い」というのが渋谷の印象です。ご飯どころからアートスポット、思い出の場所まで、こんなにピンが多いのは、それだけ魅力が詰まった街ということなのでしょう。
藤田本当に多様なピンがありますよね。
若佐2018年に上京して、美術家としての今の自分があります。最初の渋谷の印象は、修学旅行。東京といえば渋谷だろうとスクランブル交差点にやって来て、あまりの人混みにお祭り会場を探した恥ずかしい思い出も(笑)。アーティストとして多くの人と交流するうえでハブとなる街が渋谷と考え、上京後は渋谷駅からタクシーで2000円圏内に住もうと考えていましたが、当初はお金がなくて…。それでも渋谷に来たからこそ出会えた人とのつながりで仕事がどんどん広がり、この街に住むことができました。なので、渋谷といえば、「チャンスの街」ですね。
笹川渋谷の出版社で6年ほど働くなど、渋谷に何かと縁があり、今は代々木上原に住んでいます。渋谷の街を一言で表すと、「子育て世代にやさしい」。渋谷というと、渋谷ヒカリエとか渋谷スクランブルスクエアのイメージが強いと思いますが、そこから相棒のママチャリを10分走らせれば、穏やかな住宅街が広がります。渋谷に暮らしていると、駅前とローカルと子育てがシームレスにつながっていると感じますね。保育園に行ったついでにアート展に寄ったり、ちょっと時間ができたら自転車で映画館に駆け込んだり、遊びと暮らしがつながっている街だと思っています。
自転車を走らせると、暮らしに近い視点から街の変化やトレンドが見える
河原みなさんありがとうございました。ここからは「暮らす」をテーマにクロストークを進めましょう。横石さんが用賀に移った理由は?
横石富ヶ谷などの「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」は、子育て環境は整っていますが、駅から少し遠くて雨に濡れるところが…(笑)。それなら渋谷まで電車を使うとしても、駅から近い場所に住みたいと思ったのが正直なところです。
藤田用賀だと渋谷からは少し離れるけど、アクセシビリティでは近いみたいな感覚ですかね。
横石そうですね。あと離れることのメリットは、電車の中でスイッチのオンオフができることでしょうか。渋谷にずっといると刺激に慣れ過ぎてしまう気がして。
河原坂木さんの住む北千住からはどれくらいかかりますか?
坂木40分くらい。いまは北千住のシェアハウスを運営しており、クリエイター6人で一緒に住んでいます。
藤田もっと渋谷に近づきたい感覚はあります?
坂木渋谷に住むイメージがあまり持てないんですよね。刺激がほしいときに自分から行く街という思いがあって。山口県出身でずっと渋谷に憧れていた身としては、1時間もかからずに渋谷に行けるなんて、むしろぜいたくな気持ちです(笑)。
藤田笹川さんは、渋谷には穏やかな場所もあると言われていましたよね。
笹川編集者として在宅やノマドで働きつつ、ママチャリを走らせて暮らしに近い視点から街の変化やトレンドをウォッチしているため、そう感じるのでしょう。自転車を手に入れると、行動エリアが5倍くらいに広がりますからね。雨が降ると機動力はゼロですが。
河原ここで「横石問題」に戻ってくるわけですね(笑)。
横石地下道を作ってくれると解消するのですが(笑)。
藤田僕も渋谷では自転車で行動していますよ。かれこれ20年くらい働いていて、刺激には慣れちゃっていると思います。あまりオフがない感じはしますね。
横石渋谷では舞台上にいる気がするのですが、時には楽屋に行きたくなりませんか? 渋谷は、ある種の舞台機能を持つ都市空間であり、皆が主役になれる感じがします。「お好み焼き」の話もそこにつながるのですが。
ローカルな視点を持つと解像度の高い情報を得られる
河原「働く」「遊ぶ」ための舞台は分かりやすいのですが、「暮らす」となるとイメージが湧きづらいという人もいるようです。
笹川私も住んでみてから、子育てしやすいと実感したんですよね。街にいるといろんな人がいるし、渋谷らしくダイバーシティを実践しようとしている姿勢がしみ出していると感じます。
藤田若佐さんは、以前に渋谷に住んでいましたが、どう思いますか?
若佐住む前は生活感がない街だと思っていましたが、スクランブル交差点から10分も歩けば、落ち着いた雰囲気のファミリー層の多いエリアに着くんですよね。オンの場所が多いことは認識していますが、そういうほっこりとした雰囲気もあるんです。じつは自分が渋谷から出た理由は、少しほっこりとし過ぎていると感じたことが大きくて。渋谷は世界的に目立つ街だからこそロールモデルになるために多様性などを追い求めた結果、とてもバランスが取れていて、ある意味、平均的な街になっていると思うんです。住んでいると癒されるし、居心地もよいのですが、アーティストとして尖った環境を欲したことが赤坂に移った理由です。
河原これまでの#シブラバでも、全て渋谷の中で完結するから外に出る必要はないという話は何度も出てきました。ある意味、箱庭のような感覚がありそうですね。笹川さんはジャーナリストとして、自転車に乗って隈なく街を見てきたと思いますが、そういうローカルな視点を持つと解像度の高い情報を得られるのかもしれませんね。
笹川たしかに、子どもが生まれてパパママのネットワークが増えていくと、「一緒におみこしを担ごう」と声をかけられるなど、渋谷を奥深く楽しめるようになった感覚があります。
渋谷のライバルは、「ゲーム」かもしれない
河原住んでいるから見えることもあれば、外に出るから見えることもあるのでしょう。トークを進めて、次は、渋谷は「こうすればもっと良くなる」というお考えを聞かせてください。
横石大学で学生に教えているのですが、今の若者はハロウィーン関連のニュースなど、ネットの情報を受けて渋谷に対してネガティブなイメージを持つこともあるようです。関わり方によってイメージにバラつきがあるのは面白いなと思いますね。
河原ネット情報をそのまま受け取ると、そうなってしまうのかもしれませんね。
笹川本当に過ごしやすいと思うんですけどね。皆さんのお話を聞いていると、そういうほっこりとした感覚がなかなか伝わっていないのだろうと感じます。
坂木今日のトークでハッとさせられたのですが、私は渋谷に誰が住んでいるのか全く知りませんでした。じつは渋谷に住んでいる人と、ほとんど話したことがないんですよね。具体的にどうすれば良いのか分かりませんが、私もおみこしに参加したいです(笑)。たとえば、このエリアに住んでいる仲のよいおばあちゃんが1人いるだけでも、きっと渋谷に人間味を感じて見え方が大きく変わるんでしょうね。
若佐何かを生み出すためには平均的に優れた優等生であるよりも、尖っている必要はあると思います。常に時代の先を走っていた渋谷は、皆が同じように幸せになることが求められる多様性の時代に、優等生的なポジションを担わざるをえなくなっているのだと、個人的には感じています。
河原やんちゃができなくなった優等生みたいなポジションでしょうか。
若佐そう。やんちゃな方がモテたりするんですよね(笑)。
河原たしかに平均的な街だからこそ、さらに尖らせていく部分を見つけたり、個性を残したりすることは、すごく大事な気がします。
横石僕は、縦の渋谷と横の渋谷があるという気がして。高層ビルが林立することで渋谷が縦に伸びて大企業などが集まってくると、若い人は自分とは尺度の合わない街だと感じてしまいます。しかし、渋谷の街の良いところは、さっきのお好み焼きの話のように、誰でも参加できることだと思います。それが横の渋谷です。そういう渋谷の良さを、僕を含めて、この場にいるような人たちがもっと伝えていかなければいけないと思わされました。
河原どちらかというと僕も場を提供する側なので、そこは意識していきたいと自己反省しました。
横石渋谷のライバルは、ゲームだと思っているんです。昔のセンター街のヒリヒリとするような感覚は、今はゲームの中にあるんですよね。
河原情報が蓄積されている場所が競合になるのでしょうね。ゲームがライバルと考えると、実際に街を訪れてリアルな感覚を得られることは優位性になる気がします。
街としてソリッドに視点を狭めて、問題解決に取り組む視点を
藤田最後に、皆さんから一言ずついただきましょう。
坂木今日のように渋谷について多方面から語り合うのは初めてで、自分を振り返る良い機会になりました。実際に住んだことのある方々の言葉がとてもリアルで学びになりました。ぜひ、渋谷に住んでいるおばあちゃんと仲良くなって、ローカルな付き合いを探りに行きたいです。
若佐僕自身が大切にしているのは、自分が成長するためにソリッドに視点を狭めて問題解決に取り組んでいくことです。渋谷の街の発展を考えた時にも、そういう視点が必要ではないかと思っています。
笹川皆さんの意見が新鮮で、渋谷に関して改めてインプットできました。暮らす街としてはすごく居心地が良いのですが、たしかに若佐さんの言う通り、ほっこりというか、落ち着いているところはあるので、もっと私も挑戦をしたい気持ちになりました。
横石今日、新しい夢ができました。Shibuya Sakura Stageのレジデンスに住めば雨に濡れなくて済み、シブヤ愛はまったく損なわれないなあと。いつかは住めるように頑張ります(笑)。本当にいろいろなインスピレーションがありました。
河原全3回、本当に濃密な議論をお届けしてまいりました。今後、渋谷の街づくりを進める中でこのテーマはどんどん広がっていくのでしょうし、またどこかで渋谷を語る機会があると思いますが、その際はまた皆さんも参加して会話に加わっていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
今回のトークイベントをグラレコでまとめてみました!
グラフィックレコーダーの守隨佑果(しゅずい・ゆか)さんによるグラフィックボード。「渋谷は住む場所ではない!」と思われがちですが、住人からすれば「意外にほっこり」するシーンも多いとか。渋谷に住んでいる人達とコミュニケーションを取るなど、ローカルと積極的に関わることで、「暮らしの舞台」としての渋谷の魅力をより深く理解することができるのかもしれません。
「#シブラバ」へのご参加をありがとうございました!
「これからも皆さんと一緒に渋谷の魅力を引き出し続けたい」
東急株式会社・篠田なつきさん
東急グループでは、渋谷駅から半径2.5km圏内を「Greater SHIBUYA(広域渋谷圏)」と呼び、このエリアを面でとらえた街づくりを進めています。その中で、「働く・遊ぶ・暮らす」という3つの要素に渋谷の魅力をさらに高めるヒントがあるという仮説を持ち、この#シブラバというプロジェクトを立ち上げました。そして、3つの要素を自分らしく楽しまれている方々からお話を聞くにあたり、ぜひ一般の皆さんも巻き込んでシェアをして渋谷の魅力を探りたいと考えて、このようなトークイベントを開催させていただきました。
「いろいろな切り口で渋谷について語り続けましょう」
東急不動産株式会社・中村友昭さん
渋谷型都市ライフを言語化したいと考えて、「働く・遊ぶ・暮らす」の全て、もしくは一部に関わっている計12人の方々に、渋谷について語っていただきました。一人ひとり異なる視点からとても面白いお話をいただけたと思っています。今回を持って一旦#シブラバのイベントは終了になりますが、まだいろいろな切り口で渋谷を語ることはできると思っております。今後、どのような形になるかは分かりませんが、こういった企画を別の形で行っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。